川崎市事件で再燃するトリアージ。緊急時における救命の優先順位とは

川崎市事件で再燃するトリアージ。緊急時における救命の優先順位とは

川崎市多摩区の登戸駅付近で男が18人を刺し、自らも刺したとみられる事件。警察が身柄を確保した50代の男を含む3人の○○(規約により伏字)が確認された。

川崎市は28日午前の記者会見で、事件現場で消防隊員らが負傷者の容態を調べて搬送の優先順位を決める「トリアージ」を実施したと発表した。

(参考:BuzzFeed News)

先日川崎市内で痛ましい事件がありました。悲しいことにこの事件で数名この世を去りました。とても悲しいことです。

その事件について調べてみると上記のような情報を拾いました。その中で触れられたのが「トリアージ」

一般生活で馴染みのない言葉ですが、どのような行為を指すのか。今回はトリアージについて書いていきたいと思います。

トリアージとは(かんたんに)

トリアージとは端的に言ってしまえば

「小を捨て大に就く」合理主義に基づいて行われる『命の取捨選択』です。

大きな災害・事故・事件で多くの負傷者が出た場合、現実問題として突発的に医療のキャパシティを超える場合があります。

どれだけ人事を尽くしても対応できる医療従事者・病院、搬送にかかる物理的な時間、時間単位の搬送人数、病院の持つ資源・資材には限界があるためです。

とは言っても、それらを理由にして助けることのできる命を捨てることはできません。そこで考案されたのがトリアージというわけです。

具体的に言うと、負傷者をその負傷の程度や緊急性を以て救命の優先順位をつけ、より効率的に人命を救う行為を指します。

これは非常に聞こえはいいのですが、その裏には助からない・助けることのできない命は見捨てるという冷酷な一面が存在するのもまた事実です。

トリアージの歴史

医療の世界には「患者は全て助ける」という鉄の掟があります。

これは『命の取捨選択』であるトリアージとは相反する思想なのですが、どうやってトリアージはその概念を確立させていったのでしょうか?

歴史についても軽く触れておきましょう。

トリアージの歴史は意外と古く、フランス革命にまで遡ることができます。

革命以前は階級によって治療順位が決定されましたが、民主主義の導入によって階級によらない「医療必要性」の観点から負傷者の順位付けがなされたことが始まりです。

これがナポレオン戦争に突入すると、少しその様相を変えます。

戦場では前線の兵士数が勝敗を決める要因の1つなので、いかにして素早く、そして多くの兵士を前線復帰できるかが争点となったためです。

特に医療資源の限られた夜戦病院では治療できる人数や対処できる程度に限界があり、医療資源投入のルールや順位付けは必要なことでもありました。

前線の要請に応える形で考案されたのが現在のトリアージの雛形です。

素早く前線復帰できる者には手厚い治療を、前線に復帰できないもしくは助からない者は最悪見捨てる。

治療の必要性をも戦略として取り入れるという、半ば非人道的なところから始まったわけです。

もちろんこれでは余りにも非人道的で倫理やモラルからも逸脱していますので、現在では少しだけ修正されていますが。

トリアージ(実務編)

トリアージの対象

「何をするのか(実務)」を語るよりも前に「どういった場合に行われるか(対象範囲)」を先に語りましょう。

先に述べておきますが、大規模な事件・事故で多数の負傷者が現れれば、必ずトリアージを用いるというわけではありません。

では、どういった場面で用いられるのか?

これは負傷者の数・程度はもちろん周辺の医療施設の数や質などの医療環境を総合的に勘案して用いられます。

例えば大都会の中心で玉突き事故が発声し、大小さまざまな傷を負った5人の負傷者が出たとしましょう。

彼らは事故後何の心配もなく適切な医療施設に搬送され、適切な治療を受け、社会復帰することは想像に難くありません。

しかし、これがド田舎で起きたとしたらどうでしょう?

周辺には医療施設がほとんどなく、受け入れる人数も1人~2人が限界です(もちろん、遠方に出れば十分量の病院がある)。

こういった場面でかすり傷程度の負傷者を限りある医療施設に真っ先に搬送するのは正しい選択でしょうか?

これはトリアージの観点からすればNOです。

医療施設に限界があるなら、より重症度の高い負傷者から搬送し、最寄りの医療施設にて直ぐに治療を開始する必要がありますからね。

かすり傷程度の負傷者はただちにどうのこうのなる訳でもありませんので、少々時間がかかっても遠方の医療施設へ搬送されることになります。

このように総合的な勘案でトリアージの対象範囲は決定されます。

しかし、その性質上「医療環境のキャパシティを超えるかどうか」が1つの基準であることは容易に推測できます。

トリアージの実務

トリアージは負傷者の重症度や緊急度に応じて治療優先順位を決定する行為を指します。

治療優先順位は「トリアージ・タッグ」と呼ばれる識別票の色によって容易に判別することができ、負傷者の右手首に取り付けることで後から来た医療班でも一目で・素早く判別できるような工夫がなされています。

では、どのように優先順位が決められるのでしょうか?

トリアージでは負傷者を重症度や緊急度によって

3段階の治療対照群

1段階の治療不要者

にカテゴライズします。カテゴリーは以下の通り。

優先度 識別色 分類 傷病等の状態
第一順位 赤色 救護措置、搬送最優先順位群

(重症群)

体幹に重大な危険が迫っていて、速やかに(5分~60分以内)に救急医療機関で治療を開始すれば救命可能な人
第二順位 黄色 優先順位二番目群

(中等症群)

今すぐに治療しなくても生命に影響はないが、放置しておくと生命の危険がある人
第三順位 緑色 軽処置群

(軽症群)

トリアージタッグは未使用(手に取り付けるだけ)、救護所または近所の医院での救護処置で間に合う人
第四順位 黒色 不搬送、不処置群

(死亡群)

体幹や頭部に重大な損傷があり、既に生命反応がなくなりかかっている人、または既に死亡している人

(引用:トリアージタッグとは)

トリアージ区分された負傷者のトリアージ・タッグの不要色は千切られ、先端にある色で優先順位が判別できるようになります。

搬送・救命措置の順位は赤色⇒黄色⇒緑色となり、黒色は最後に救護所へ搬出されます。

トリアージ・タッグは3枚つづりで医療事項や特記事項も記すことができ、簡易的なカルテとしても活用できる仕組みになっています。

さて、今回はトリアージについて書いていきましたが治療の優先順位を決めるトリアージについて読者の皆さんは何を感じ、何を思ったでしょうか?

これを読んだ読者の方々がトリアージについて理解を深め、議論していくと私も嬉しい限りです。

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