木のコブはどこからやって来るのか?原因はまさかの細菌だった!!

木のコブはどこからやって来るのか?原因はまさかの細菌だった!!

大木や老樹の中には地表から高い位置の幹にコブができていることがあります。

大小さまざまなコブがありますが、多くは単一では存在せず複数個のコブが寄り集まってできており「袋」のようにも見えます。

このコブは「クラウンゴール」と言われ、アグロバクテリウム・ツメファシエンスと呼ばれる細菌によって引き起こされたもの。

コブの中は細菌の住処になっており、さながら癌組織のようなもので徐々に樹木を弱らせていきます。

ツメファシエンスはどうして樹木に感染するのか?どういった経路でコブを形成するのか?今回はそんな木のコブについて見ていきましょう!

(木のコブは細菌種以外でも引き起こされる場合があります)

細菌とプラスミドDNA

さて、アグロバクテリウム・ツメファシエンスという聞きなれない細菌の名前が出てきましたが、どのような生物なのでしょうか?

通常アグロバクテリウムとは植物に感染して病原性を示す細菌のことを指し、その中でも特に根頭にコブを形成する細菌をアグロバクテリウム・ツメファシエンスと呼んでいます。

この細菌は植物細胞に感染するとプラスミドDNAを植物細胞に送り込み、植物DNAに挿入させるという特徴を持っています。

プラスミドDNAとは

アグロバクテリウムを始めとする細菌種はヒトとは異なり自身のDNAとは別にプラスミドと呼ばれる環状のDNAを持っていることが知られています。

プラスミドDNAは生存には必須ではないのですが薬剤耐性や諸環境への適応、毒性、接合などの形質をコードしており、細菌の繁殖や生存を裏から支える立役者だと言ってよいでしょう。

またプラスミドDNAの特性として「伝播」が挙げられ、細菌の種を越えてプラスミドDNAの交換を行うことができ、細菌全体の生存能力・適応能力の底上げにも直結している厄介な代物です。

夏になると流行するO-157大腸菌も、医療現場で頭を悩ませる多耐性菌もプラスミドDNAのやりとりで強化された細菌が引き起こすものです。

自身のDNAを運搬していたら大変なことになるので、言葉も交わせない細菌同士のやりとりにおいてプラスミドDNAは必須。

中でも、アグロバクテリウム・ツメファシエンスは本来細菌同士のやりとりに使われるプラスミドDNAを植物に感染させることができる変わり種なのです。

では、なぜアグロバクテリウム・ツメファシエンスは植物にプラスミドを輸送するのでしょう?

なぜツメファシエンスは植物に感染する?

アグロバクテリウム・ツメファシエンスも他の細菌と同様、植物にプラスミドDNAの一部を挿入(組み換えといいます)させるために感染します。

これによりプラスミドDNAが組み込まれた植物細胞はオパインと呼ばれる特殊なアミノ酸を合成させられます。

オパインはアグロバクテリウム・ツメファシエンスだけが有効に活用できるアミノ酸で、他の細菌では分解して栄養源とすることができません。

と い う こ と は

この細菌に感染した植物細胞はオパインを積極的に合成することで他の細菌を排除、アグロバクテリウム・ツメファシエンスしか住めない環境を作ってしまうのです。

「自分達だけが栄養源として使えるアミノ酸を合成させ、自分達以外の細菌を排除する」

この目的のために植物細胞にプラスミドDNAを輸送して家畜化しているわけです。

なかなかえぐい戦略ですね笑

コブの発生原因

もちろん植物細胞の数が増えれば増えるほどオパインの合成量も増加するので、アグロバクテリウム・ツメファシエンスはオパインの他にちょっとした小細工ができるDNAも同時に組み換えます。

このDNAを挿入された植物細胞はオーキシンサイトカイニンと呼ばれる植物ホルモンをじゃんじゃんと合成するようになります。

オーキシンとサイトカイニンはどちらも細胞分裂を促進させる物質。この物質のせいで感染した細胞はどんどんと細胞分裂を繰り返し、やがて肥大化⇒コブのようになるのです。

「オパインの合成量を増やすためにオーキシンとサイトカイニンを合成させ、細胞数を増やす」

これがコブができる原因なのです。

これは人間の放牧と似ています。

より美味しい肉を求めて品種改良を繰り返し、収穫量を増やすために肥え、太らせる。

人間が安定した食料源を開拓したように、細菌はもっと古くから「獲物をより美味しく」食べる方法を見出していたのです。

コブが地表より高い位置にできる理由

ちなみにここまで書いてきてなんですが、実はアグロバクテリウム・ツメファシエンスが感染する箇所は通常、植物の「根」。コブも当然、根にできます。

なぜ幹にできるのか?ちょっと他のサイトでより詳しい説明があったので、引用させてもらいます。

通常多くの「根頭がんしゅ病」が、根と茎の境界部分(地面に接している部分)にできるのに、なぜ、高い位置にできるのか、と思われたからでしょうか。

実は、半世紀以上前から、「二次こぶ」という現象が報告されています。

今回ここで問題にされている高い位置の「こぶ」は、このような「二次こぶ」ではないかと思います。

アグロバクテリウムは土壌細菌ですので、最初は植物の地面の近い部分にこの細菌が感染して「一次こぶ」ができます。

それからしばらくして(数ヶ月から数年に渡ることもある)、「傷」による明瞭な感染部位がなくても、地上部の高い位置に「こぶ」が形成されることがあり、これを「二次こぶ」と呼びます(英語では、Secondary gall と呼びますが、最近ではほとんど死語になっています)。

「二次こぶ」は多くの場合、老齢な木に見られます。このような現象は興味深いのですが、今でも理由はわかりません。

私は、「一次こぶ」の中で増えたアグロバクテリウムが、維管束や、細胞間隙を伝わって植物の体内を動き、傷ついた細胞に出会うと感染し、細胞増殖を誘発し。「こぶ」ができるのではないかと、考えています。

引用:木のこぶについて

とのことです。

私もこの意見に賛成です。

ヒトでも癌細胞は血流に乗って転移しますしね。

また、コブの形成箇所にさらにコブができるのも根拠にしたいところです。恐らく急激な細胞分裂によってコブを形成する細胞は損傷個所が多いのではないか?と考えています。

植物細胞は高等動物ほど複雑な免疫システムは持っていませんが、それでも種々の化学物質(抗生物質含む)や細胞壁のリグニン蓄積によって細菌から身を守っています。

植物も細菌の暴挙をただ黙って見過ごしているわけではないのです。

それでもコブ形成箇所にコブができやすいのは通常とは異なる速度で増殖を繰り返したがために細胞自身が「弱っている」と解釈してもおかしくはないはずです…きっと。

ここまで書くとアグロバクテリウム・ツメファシエンスがすっごい悪者のように聞こえますが、実際は人間世界ではかなり重宝されています。

オパインや植物ホルモン合成促進がコードされているDNAを人工的に取り除いて、代わりに作物がよく育つような何か、より美味しくなるような何か、より病原菌に強くなる何かを合成するDNAを埋め込めば作物を人工的に進化させることができますからね。

こうしてできるのが遺伝子組み換え作物です。

コブの発生原因細菌は私達の暮らしのすぐ傍にも息づいているのです。

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