「オスヲハイジョシロ」オス→メスへの性転換を強要する細菌バルボキアとは

「オスヲハイジョシロ」オス→メスへの性転換を強要する細菌バルボキアとは

国連の統計によると、2015年の時点で世界の人口は73憶4947万2千人、その内

男が37憶720万6千人

女が36憶4226万6千人

と、男:女=50.4%:49.6%で男女比はほぼ1:1であることが判明しています。

基本的に性別にはオスとメスしかないことを考慮すれば男女比が1:1に近づくことは当たり前のように感じられますが、昆虫のとある集団にはメスしかいないことがあります。

この生殖の仕組みに深く関わるのが今回ご紹介する「バルボキア」と呼ばれる細菌。バルボキアはメスに感染した方が生息域拡大・個体数増大に有利なので積極的にオスを排除しようとするメカニズムをその身に秘めています。

ということで、今回は性転換を強要する細菌バルボキアについて書いていきたいと思います。

共生とは

複数種の生物が相互関係を持ちながら同所的に生活する現象を生物学的に「共生」といいます。

例をあげるならシロアリがそれに該当するでしょう。

シロアリは体内にセルロースを分解して有機物に変える細菌を飼育しています。この細菌を持つことでシロアリは木くずから栄養を摂取でき、また細菌側もシロアリという生物を介することで外界から安定してセルロースを摂取して生きることができます。

他にもゴキブリ、アブラムシ、ハエ、ハチなど昆虫と細菌の奇妙な共生関係は案外普遍的でむしろ共生細菌がいないと単独で生き残れない昆虫さえいます。

私達の身体でエネルギー産生を担当するミトコンドリアや植物の光合成に欠かせない葉緑体ももともとは共生細菌の仲間だったことが研究から判明しています。

とはいえ、共生関係もいつも相互扶助的なものばかりではありません。ときには片方にしか利益がない場合もあります。

そんな関係を強要してくる細菌の中でも奇妙なものが「バルボキア」と呼ばれる細菌。なんと彼らは感染した昆虫に対してオスからメスへの性転換を強要し、オスを積極的に排除するプログラムを組みこんだ恐るべき存在なのです。

オスの積極的な排除

バルボキアは宿主生物の細胞の中で生活しており、繁殖の際には卵巣内の卵細胞を介して次世代に伝達します。これは卵細胞が精細胞に比べて巨大で、収納スペースがたくさんあるため。

対して精細胞は鞭毛と核しかなく収納スペースがないため、バルボキアが感染できる余地がありませんので、次代に伝わらせることはできません。

ということはバルボキアからしてみればオスの存在は不必要。むしろオスを排除することで感染メスのエサの取り分が増えてさらに生息域の拡大に寄与することができます。

このような中でバルボキアはオスごろしと呼ばれる男性諸君からすれば冷や汗必至のえぐいやり口を獲得しました。

しかも、バルボキアがオスを排除するメカニズムはオスごろしだけではありません。主に以下の4つの仕組みでオスを排除することがわかっています。

1.オスがオスなしでメスを産んで繁殖できるようにする(単為生殖誘導)

2.遺伝的にオスである宿主をメスに変えてしまう(性転換)

3.オスの卵のみ発生初期に排除してメスだけが孵化するようにする(オスごろし)

4.感染していないメスの繁殖を感染したオスが妨害する(細胞質不和合)

(引用:さがせ、おもしろ研究!ブルーバックス探検隊が行く)

最後の細胞質不和合はちょっとわかりづらいですが

非感染メス+感染オス=排除

感染メス+感染オス=孵化成功

といった具合で非感染メスの孵化を妨害することで世代を経るごとにメスの割合を高めていく方法です。

この余りにも徹底的で完璧な戦略でバルボキアは“動物界でも特に成功を収めている寄生生物”とも称され、クモやダニが属する節足動物の約70%は感染していると言われています。

ただバルボキアの仕事は常に完璧というわけではなく、ときにはオスの形質とメスの形質両方を持ちあわせた間性個体を生み出すことさえあります。

今回ご紹介したバルボキアの性転換のメカニズムの詳細はいまだ不明な部分が多く、さらなる開拓が望まれています。成功すれば性制御や害虫の制御など幅広い分野で応用されるでしょう。

…が、男性の私からしてみればバルボキアが人間界に進出してこないことを切に願うばかりです。

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