うさぎの耳から学ぶ歌手の引退、果たして喉の酷使が癌の原因か?

うさぎの耳から学ぶ歌手の引退、果たして喉の酷使が癌の原因か?

声を出すことを生業とする人達、例えば歌手や落語家、政治家の中には喉頭癌が原因で引退する人がままいます。

4年も昔の話にはなりますが、落語家の林家木久扇さんも初期の喉頭癌であることを発表して世間に賑わせました。

同年の3月にはモーニング娘。などを育てた音楽プロデューサーのつんく♂さんも初期の喉頭癌であることが発覚。

もっと時を遡れば、20年程前には勝新太郎が下咽頭癌で命を落としています。

のどの癌は大別すると喉頭癌と咽頭癌に分けることができます。

どちらにせよ声を出す器官である声帯若しくは声帯付近に癌ができますが、その罹患率は癌罹患率の中でも非常に低く、3%未満程度だと言われています。

こういったデータを聞くとあまりにも実際の罹患率が低いので「喉の癌に苦しむ人が声を使う人に多いのは、喉を酷使したせいではないのか?」などといらぬ詮索までしてしまうのは人間の性でしょうか?

ということで、今回は「声を商売道具とする人達にとって、喉の酷使が癌の原因になりうるのか?」について書いていきたいと思います。

うさぎの耳で癌を作る

読者の皆さんが癌の原因を考える時、何を思い浮かべるでしょうか?

お酒?たばこ?食生活?衛生環境?体質?遺伝?細菌感染?栄養?

癌が昨今のように猛威を奮っていなかったころから当時の人間も今と同じように癌の発生原因について究明を行っていました。

癌の発生原因を探ることで、予防はもちろん、メカニズムを知れば根絶ができると考えたためです。

そのため、当時は人工癌を作ろうと多くの学者が躍起になっていました。

この人工癌研究のパイオニアとして、日本の病理学者である山極勝三郎という人がいます。

彼の行った研究が今記事の骨子部分なのですが、いきなり実験の話をされてもアレなので、まずは発癌研究の時代背景について少し触れておきましょう。

発癌の時代背景

発癌について初めて言及がなされたのは1775年のことで、そこでは煙突掃除夫に陰嚢癌が多数見られることが言及されていました。

そこから100年程たった1874年にはコールタールを取り扱う労働者に職業性の皮膚癌ができやすいことも示唆されました。

この時代は他にもニコチンによる口唇癌、う歯による舌癌、エックス線癌など自然環境下での発癌報告が多数挙げられていました。

そして、そのどれもが外来刺激による発癌以外に考えられないものでした。

このように患部の外側から物理的・機械的な刺激によって患部が癌化することを「刺激説」と呼び、当時は誰もが刺激説を支持していたのです。

山極がドイツ留学中に師事していたウィルヒョウも1858年に刺激を原因とする発癌について説を発表しています。

しかし、自然環境下での刺激由来性発癌は確認されても人工環境下での刺激由来性発癌についての実験はなかなか成功せずに難航の兆しを見せていました。

そんな折に刺激による発癌とは異なるベクトルで癌を発生させる実験を成功させた者が現れます。

デンマークのフィビゲルは1913年にラットにとある寄生虫を感染させたゴキブリを餌に与えることで胃癌の発生に成功したのです。

山極、火がつく

この実験結果を受けて、山極にも火がつきます。

それまで誰もが成功しなかった刺激を原因にした発癌について本格的に実験を開始するのでした。

山極はまずコールタールを取り扱う労働者に職業性の皮膚癌患者が多いことに着目して、コールタールを使った実験に取り組むことに決めたのです。

しかし、当時コールタールを使った発癌研究については多くの学者が失敗しているのも事実でした。臨床的事実に基づき試行錯誤を繰り返して小さな腫瘍を作り出しても、悪性腫瘍までは誰も作れなかったからです。

ただ、山極は地道な努力と忍耐により実験を成功に導くのです。

では、それはどのような実験だったのでしょう?

すごく単純です。

延々とコールタールをうさぎの耳に塗擦するだけなんですから。

ただそれだけの実験です。

勘違いしてほしくないのは「塗布」ではなく「塗擦」ということです。

山極は刺激説を支持していたので、「表面だけに塗った」のではなく「ゴシゴシと押し付けるように塗った」ことを主張するために塗擦という言葉を好んで愛用していたそうです。

山極は当時の助手、市川と共に寝食も忘れ、うさぎと半ば同棲しながらコールタールを塗擦し続けました。

まず隔日にコールタールを耳に塗りたくって、その後、2日おきにコールタールを塗りたくります。コールタールによる膜ができてもお構いなしです。出血も厭わず剥がしてコールタールを塗りたくりました。

この実験を延々と繰り返していくうちに患部に変化が生じ、3ヵ月後には患部に悪性腫瘍ができあがっていたのです。

この反復的なデータを取るために山極は約3年に渡って実験を繰り返し、1915年にはついに人工癌の発生に成功するのです。

この実験結果は、ノーベル生理学・医学賞にノミネートされる程の偉業で、山極は人工発癌特に刺激を由来とする発癌研究者として歴史に名を残すのでした。

喉の酷使が癌の原因となりうるのか?

さて、歌手達の話に戻りたいと思います。

ちょっと、ここで彼らの商売道具である声帯を見てほしいです。

(音が出ます。注意してください)

(難しい話は置いといて)声は声帯が細かく震えることで生じています。

「震える」ということは声帯に外部から物理的・機械的な刺激が加わっているという状況でもあります。

あれ?なにかに似てませんか?

そうです。山極が行った実験そのものと状況的にはとても酷似しているのです。

歌手や落語家が1日にどのくらい声を発しているのかは知りませんが、コンサートにラジオにテレビにレッスンにと考えれば1日の大半は声を出し続けている状況であることは明白です。

勿論、個人個人で喉に対して気を使っているのでしょうが、ケアよりも消耗の方が上回っています。

山極が行った実験でも数日おきにコールタールを塗りたくるものだったのに、歌手たちはその比ではありません。来る日も来る日もコールタールを塗擦するのと同様の環境です。

また、声を出すことで喉から水分が失われ、爛れるようにもなります。

これがいわゆる「声がかれる」というものなのですが、それでも声を生業とする人達は声を出さないという選択肢はありません。

違和感を感じようと痛かろうと声帯を震わし、声を出すしかないのです。

こうなると爛れた患部に刺激を加え続けてしまう環境ができあがるので、うさぎの耳と同様に癌ができてしまう土壌が整ってしまうのです。

ということで、今回は喉の酷使が癌の原因になりうるのか?について見ていきましたが、どうでしたでしょうか?

同じ箇所をぐにぐにと動かし続けたら癌化することはとてもよく知られた現象ですので、ちゃんとケアして舞台に臨んでほしいと思うばかりです。

ではまた!

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