胎児は進化の歴史を辿る【お腹の中で起こる40億年のイベント】

胎児は進化の歴史を辿る【お腹の中で起こる40億年のイベント】

読者の皆さんは生まれたての赤ちゃんの顔を見たことがあるでしょうか?

親御さんでなくても、テレビや漫画なんかで見たことがあるかもしれませんね。

そういったシーンでは、よく

「猿みたいー♪かわいいー♪」

と周囲が顔を綻ばせて出産を喜びます。

さて、ではほんとうに猿「みたい」なのでしょうか?もしかして、本当に猿なのでは?

(侮蔑的な意味ではありません笑)

知っての通り、私達ヒトは猿から進化した哺乳類です。

樹上生活をやめたことで手は道具を扱うツールとなり、頭は考えるための器官として肥大し、立ち上がるために脚も長くなりました。

ですが、赤ちゃんは猿にとても似ています。外見の話もそうですが、握る力なんかもそうです。

赤ちゃんに指を握らせると力強く握ってきますが、あれは樹上生活の名残です。

樹の上で暮らす母親に振り落とされないようにしっかりと握ることで自分の命を守っているのです。

「おいおい、それでも猿は言い過ぎだろ…」

って声が聞こえてきそうですが、そんなに行き過ぎた話でもないように感じます。

それは今回ご紹介する胎児の発生の記事にて書いていきたいと思います。

ということで、今回は胎児の発生について見ていきましょう。

胎児は進化の歴史を辿る

精子と卵子が出会って、受精卵がお腹の中ですくすくと成長し、やがて出産に至る…

という出産のステップを知っている人は多いようですが、その発生過程を詳しく知る人はあまりいません。

受精した受精卵は同調分裂を繰り返して細胞数を指数関数的に増やしていきます。

同調分裂が終わると周りの空気を読んで、自分の役割が何なのかを考えながら自立的に分裂と分化をしていきます。

ここでヒトの原始的なカタチが出来上がります。

赤枠がヒトの原始的な姿のイラストです。

「え、稚魚じゃん」

と思われた方、正解です。

(ヒトに限った話ではないのですが)私達ヒトの出発点はまずはなのです。

ここから発生が進むと、さらに驚くべきことが起こります。

Stage1.軟骨魚類的段階

受胎32日目の胎児では、心臓が魚類と同様に一心房一心室で、顔の側面には、魚類の鰓裂に相当する数対の裂け目が現れる。古生代の軟骨魚類の特徴を残すラブカとよく似ている。

Stage2.両生類的/爬虫類的段階

受胎35日目の胎児では、鰓の血管が肺の血管へと変貌を遂げ、胎児の鰭のような突起が五本指の手を備えた腕になる。中生代初期の爬虫類の特徴を残すムカシトカゲとよく似ている。

Stage3.原始哺乳類的段階

受胎38日目の胎児では、眼が前方に集まるが、尾骨がまだ突き出ていて、体毛が生えている。新生代初期の原始哺乳類の生き残りであるミツユビナマケモノとよく似ている。

(引用:浦島伝説の謎を解く)

と、ヒトの発生は地球上で起きた進化の歴史をものの見事に辿るようにして起このです。

ちなみにこういった「生物の発生は進化の諸段階を繰り返すような発生プロセスを辿る」とする主張は反復説と呼ばれています。

原始生命が誕生したのはおよそ40億年前です。

この時生まれた生き物はやがて原始的な魚類へと至り、紫外線が弱くなったのを見計らって地上に出ます、地上で暮らすために鰓呼吸から肺呼吸へとシフトした両生類、強力な鱗と爪、牙で地球の王者として君臨した爬虫類、そして非力ながらも独自のセンスで生き延びてきた哺乳類…

この40億年という途方もなく長く、スケールのでかいイベントを胎児はわずか十月十日という短い期間で追体験しています。

その再現スピードは1日にして1290万年に相当します(310日計算)。

これは何も形態的なモノに限った話ではありません

発生が進むにつれて胎児は“獲得免疫の獲得”や“造血システムの構築”“血管系の消失と分化”などのイベントを着実にこなしながら、どんどんヒトらしくなっていくのです

ミニチュア人間、現る!

この反復説自体は賛否両論あるものの、この説が唱えられる前は前成説という正直、わけのわからない説が顔を利かせていました。

これは「受精卵の中にはミクロなヒトがいて、それが形を変えずにどんどん大きくなるんだ」という説です。

顕微鏡の発明でミクロなものが見れるようになると、精子と卵子のどちらにヒトのミニチュアが入っているんだと○ォーリーを探せ!みたいな捜査劇が膜を開けました。

もちろんいないものを発見できるはずもないのですが、後に引けなくなったのかとうとうイラストまで書く者が出る始末…。それが下記のイラストです。

(Wikipedia:前成説)

精子を顕微鏡観察したら精子の中にミニチュアの人間を見つけたので、思わず前衛的な手段で描き起こしちゃったぜ!てへぺろ

みたいなノリで描いたのでしょう。

現代では当然否定されていますが、DNAが生物の雛形という解釈では的を得ているので、そういった意味では正しいということになっています。

なぜ進化の歴史を辿るのか

反復説の話に戻りましょう。

なぜわざわざ進化の歴史を辿るようにしてヒトに至るのでしょうか。

他サイト様で面白い解釈がでていますので、そちらを紹介したいと思います。

発生初期の胚の体制や構造を決定する遺伝子をホメオティック遺伝子というが、線虫から人間にいたるまで、真核生物には、共通したホメオティック遺伝子の配列、ホメオボックスがある。人間には尻尾や鰓はないが、それは尻尾や鰓を作る遺伝子がないのではなくて、その遺伝子がオフになっているだけで、オンにすれば、人間にも尻尾や鰓が発生するという考え方である。何をオンにして何をオフにするかは、進化のプロセスを通じて決定される。比較発生学と遺伝学が統合された結果、反復説は再び脚光を浴びることとなった。

中略

進化の中の生物は、ノイラートの船である。生物は、一度死んでしまうと再生できない。つまり、生物という船は、陸地に引き上げて一から作り直すわけにはいかない。航海を続けながら、部分的な修正を積み重ねていくしかない。その結果、生物の遺伝情報は、経路依存的な設計図となる。系統発生が個体発生においてを繰り返されるということは、遺伝子の再生産の歴史が遺伝子の歴史の再生産をもたらしているということである。

(引用:個体発生は系統発生を繰り返すのか)

(というか、これを書きたいがためにこのネタを選びました笑。うちの講義でもこれと似通った説明でしたが、この説明文句はグローバル的に広まっているんでしょうかね?)

生物の設計図である遺伝子は誰かがひょっこりと持ち出してきたものではありません。

親から拝借してきたものです。

親にはさらに親がいますし、その親にも親がいます。これが連綿と紡がれて今があります。

つまり、生命は連続的な環境の中で構成されたモノなのです。

故にヒトの遺伝子の中には他の生物の遺伝子情報も詰まっているわけです。

ですが、ヒトには鱗や鰓、尻尾はありません。発生の段階で消失してしまうためです。

ヒトはヒトになるように発生の段階で前時代的な器官を消去していくのです。

対して、その源である遺伝子は消失させたりしません。上記の例になぞらえていうなら“航路図”を消す行為に繋がるからです。

いままで航路図を頼りに進んでいたのに、急に航路図を失くしたら船は迷ってしまいます。

また、航路図を持っていないということは次代にそのノウハウを継承させることができないということでもあります。

これは生命の連続性とは逆行する行為です。

故に私たちは経路依存的な発生をせざるを得ないのです。

これが胎児が進化の歴史を辿る理由だと私は考えています。

ということで1番最初の

「猿みたいー♪かわいいー♪」

のお話に戻りましょう。

私達ヒトが進化の歴史を辿ってヒトになることは説明しました。では、どの時点でヒトになるのでしょう?

少なくとも私は出産直後の赤ちゃんが真のヒトであるとは言い難いと思っています。

「胎児が魚類の形から始まるように、赤ちゃんは出産の時点ではまだ猿の状態で、育児によってヒトへと至るものでは」と考えることがあるからです。

出産直後は猿の特徴をいろいろ持っている赤ちゃんも時を経るごとに猿の特徴を捨ててどんどんヒトになっていきます。

進化の歴史を辿る行為は出産してからもしばらく続くのです。

ですから、出産直後はまだまだお猿さんかな…というのが私の見解です。

ということで、今回は胎児の発生と進化の歴史について書いていきました。

正直「ヒトの発生って魚類から始まるんだぜ。すげー!」くらいを200-300文字で書きたかったのですが、ちょっと無秩序に書いてこんな記事になってしまいました。

学生の時はそこまで思い入れのなかった進化学ですが、なぜか最近は楽しく感じるようになってきました。

皆も自分の身体の生い立ちから進化を学んでみましょう。

ではまた!

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