安心して生肉を食べたい!安全を担保する技術「トリミング」とは?

安心して生肉を食べたい!安全を担保する技術「トリミング」とは?

生食はとても危険な行為です。

人が猿から進化して、ここまで発展してきた背景には「焼いて食べることを覚えたから」とする人もいる程です。

特に微生物学を専攻して神経質になった私や医者、看護師にとってはリスクを冒してまで口にしたいものではありません。

ですが、やはりというか何というか「食」に対する飽くなき探求心の末に生食の危険性を理解しても止められない人達がいます。

(「食べ方」に拘るのはヒトだけです。自然界における飽食はまずありえませんので、手段は選んでられません)

私の友人もまたそんなギャンブルめいた食事をする1人です。

先日、そんな友人と居酒屋で飲む機会がありました。

席につくなりユッケを頼む友人。私は生食が嫌い(我儘ですが、見るのも怖いです笑)なので、悶々とした表情に彼も気が付いたのでしょう。

彼は一言言いました。

「生肉はトリミングされてるから大丈夫だよ。ユッケは過去の事件で厳しいし」

と。

つい先程まで目の前で行われるであろう生食の饗宴に怯えていた私は「トリミング」という謎の単語が気になり、箸も進まない状態になりました。

お酒は進みましたが。

ということで、先日その「トリミング」という行為がどういったものを指すのか調べてきたので、背景や目的と一緒に説明していきたいと思います。

平成8年という食中毒の魔の時期

まずトリミングという単語は脇に置いといて、食に対する意識の変化について見ていきましょう。

汚染された食品を口にすることで食中毒になることはずいぶんと昔から知られていましたが、平成8年までは食に対する危機感が個人・法人共に随分と低く、関心も寄せられないトピックでした。

しかし、平成8年の食中毒多発事件を皮切りに社会からの要望やユーザー保護のために食品衛生に対する見直しが行われるようになったのです。

平成8年に起こった食中毒事件の一部をざっと紹介します。

ケース1

都道府県:福岡県

場所:保育園

被害状況:2,4歳児が下痢症状を起こす。調査の結果、O157が検出された。後、入院。保育園全体の調査をすると園児7人からもO157が検出された。

ケース2

都道府県:岡山県

場所:市内小中学校

被害状況:発症者が小学生1人、中学生300人。後、328人が感染する。計65人が入院。

ケース3

都道府県:岐阜県

場所:小学校

被害状況:児童7人が下痢や腹痛を訴え、入院。調査の結果、女児の検便からO157が検出された。

(引用:国内で発生した事故・事例等を対象とした食品の安全に係る情報の収集と提供に関する調査報告書)

平成8年の食中毒発生件数は1217件、患者数は延べ43935名でした。

平成7年度の食中毒発生件数699件、患者数26325名と比べて急増しており、社会問題にまで発展しました。

また、この時期を境に出血性大腸菌であるO157の悪名高さが世に広まったのも特徴でしょう。

O157は食品以外にもあらゆる場所に潜んでおり、完全な除去が困難であること。少数菌での発症も確認されていること。そして、第二次感染の成立も容易で患者数が膨れ上がること。

これらを背景にO157による食中毒を重く見た行政当局は厚生大臣を部長に置いた「病原性大腸菌O-157対策本部」を設置してまで、防疫対策に乗り出したのです。

これが平成8年の食中毒多発事件のあらましです。

これを皮切りに食品衛生が見直されましたが、その中に本記事の主役である「トリミング」が盛り込まれました。

生食を可能にする技法!トリミングとは?

さて、では主役のトリミングの話に移りましょう。

答えから言うと、トリミングとは「肉の表面を切る若しくは削る行為」のことを指します。

trim(整頓する、手入れする)の現在分詞trimmingが語源で、画像編集やペットを飼っている方には馴染み深い用語だと思います。

肉のトリミングも同様で、切ったり削ったりすることを指すんですね。

では、なぜ肉を切ったり削ったりするのか?

答えは単純明快です。

「肉表面の細菌を除去するため」です。

生肉が危険な理由はO157を始めとする細菌が肉を汚染しているためです。

細菌は条件が整えば指数関数的に増殖することもあり、熱処理を加えてない生肉は細菌にとっても絶好の増殖場所なのです。

そうしてできあがった汚染肉を口から摂取すると食中毒を発症します。

ですが、やはり生肉を食べたい人達は世に存在する…。そんな彼らのために最後の砦として「トリミング」という技法が確立されました。

トリミングは細菌が最も増殖する表面を除去することで汚染肉をキレイな肉にするという少々荒っぽいですが、それなりに確実な手法です。

ですが、これ以外に生肉を安全にする方法がありません。確かに細菌はアルコールや熱に弱いですが、アルコール除菌した食品を口にしたくはありませんし、熱を加えたらそもそも生肉ではありません。

ということで、トリミング処理した生肉の提供が認めらているわけですね。

(とは言っても、それでも生肉の食中毒は後を絶たないわけですが…)

家庭でもトリミングってできるの?

※個人の感想です。当ブログの記事の通りにやって食中毒等の健康被害が出ても、責任を負いかねます。

という注釈を経て、家庭でもできるトリミングのポイントについて書いていきます。

家庭でのトリミングのポイント

1.まずは心構えだ!!!

食中毒の原因菌は多岐に渡り、その生息場所や生態も様々です。

また目に見えないということも相まって、読者らが口にしようとしている生肉からの細菌の根絶は現実的ではありません。

「細菌はどこにでもいる」という認識の下、調理を適切に行い、食事をし、また罹患した場合も「長い人生、こういったこともある…」と病院の天井を見る覚悟を決めましょう。

危険性を理解しながらもついつい手を出してしまうという意味では生食はもはやギャンブルです。ギャンブラーとしての自覚もしっかり持ちましょう。

2.購入時にはここを見ろ!

生食を前提とした肉はブロック肉での購入が一般的ですが、なるべく体積が大きく、表面積の小さいものを購入しましょう。

そして、刺し傷がないことも確認したいところです。深度のある傷があると、そこから細菌が侵入することで深部が汚染されてしまいます。こうなると、トリミングの意味がありませんからね。

3.保存方法

購入したブロック肉は速やかに冷蔵庫で低温保存します。

細菌の増殖速度は4℃以下で急激に低下します。反面、35℃付近での増殖は“ヤバイ”です。

絶対に室温で放置しないようにしてください!

4.調理器具の洗浄!

トリミングをする前に調理器具の洗浄も行いましょう。

例えトリミングが完璧であっても包丁やまな板から細菌が移ってしまい、食中毒を引き起こす可能性があります。というか、過去に何度もあります。枚挙に暇がありません。

洗剤での洗浄→煮沸水をかける→乾燥

を行うとほぼほぼ完璧です。

5.手指の洗浄

手も細菌の温床です。

調理前の洗浄はもちろんですが、調理中も都度、丁寧に綺麗にしましょう。

まあ本当は調理用のビニール手袋が1番望ましいです。手指から細菌がいなくなることはないので。

6.いよいよトリミング!

本当だったら表面は全部怖いので丸焦げにしたいのですが、手間です。

食べる部分だけを大きくトリミングして、煮沸消毒を行いましょう。煮沸水にくぐらせるのは数秒でいいと思います。そして、くぐらせた後は熱を除くために冷却水で冷やします。

トリミングの際に忘れてはいけないのが“縁”の除去です。

O157は数百の数で発症に至りますので、縁だけでも十二分に脅威です。必ず縁の除去を行いましょう。

こうすることで生肉を美味しく食べれるようになる…と思います笑

私が微生物学を専攻していた時の教授は生食反対派でした。

生食はどんな手段を以てしてもリスクが伴います。

一見、とても綺麗な小川の水でもアメーバや寄生虫、大腸菌はうじゃうじゃと潜んでいます。

しかし、目に見えないので私たちは安全だと思い込んでしまうんですよねー…。

私もその教授に感化されて生食反対派なのですが、生食の安全性を担保するための苦肉の策である「トリミング」が面白くてつい記事にした次第です。

まあ、あんまり神経質になっても食に対する楽しみと引き換えになるので…。難しいところですよね。

というところで、話を終わりたいと思います。

ではまた!

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トリミング表面は汚染されているので、できれば包丁は分けておきたいところです。

衛生面的にも余裕があれば数は確保しておきましょう。

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