痕跡器官が教えてくれる生物の起源【“蛇足”から進化の軌跡を見る】

痕跡器官が教えてくれる生物の起源【“蛇足”から進化の軌跡を見る】

蛇に足はあるのか?

蛇足とは

(引用:蛇足の故事)

皆さん、蛇足という言葉を知っていますでしょうか?

そうです。「不要な物」や「不必要な行為」を表す言葉ですよね。

ですが、この言葉が成語された経緯についてはちょっとうろ覚えな方がいらっしゃるのではないでしょうか?

蛇足の故事について簡単におさらいしましょう。

昔々、中国の楚という国の人が先祖の法事を手伝ってくれた方に法事で使ったお酒を飲んでもらおうとしました。

しかし、お酒は法事で使った後なので全員で飲み回す分には足りません。

そこで「この場で蛇の絵をいちばん先に書いた人がお酒を独り占めできるようにしよう」と提案する人が出てきて、皆もそれに賛同しました。

とある1人が1番先に描ききったのですが、他の人はまだ描き切れていない様子。

それを見て退屈凌ぎと自慢のために蛇の絵に足を追加します。

要は「蛇に足を描くくらいには時間の余裕があるぞ」と誇示したかったわけですね。

しかし、次に描き切った人間がこの絵を見て「蛇に足はついていない。この酒は俺が貰うぞ」と言って、お酒を飲み干すのでした。

という故事です。これから転じて、不要な物を蛇足と言うようになりました。

さて、ここで皆さんに考えてほしいことがあります。

本当に蛇に足はついていないのでしょうか?

本当に?

神に誓えなどと子供のようなことは言いませんが、それでもたいがいの人は「蛇に足はついてないだろう」と答えるはずです。

ですが、私はあえてこう言いたいです。

蛇に足はついてるよ」と。

蛇の足み~つけた

蛇の祖先はトカゲのような手足のある爬虫類であったと考えられています。

いつ、どこで、何のためにといった点は未だ不明ですが、進化の過程でこのトカゲは足を退化させました。

少年/少女時代にイモリを追いかけていたら岩の間に隠れられた経験があるかと思います。

彼らは暗くて狭い場所を縄張りとしています。

そんな狭い場所にスルリと入り込めるように手足を失くす適応を遂げたものだと考えられます。また、音もなく獲物に近づくためには音のなる手足が必要ないので退化したとする考え方もあります。

ちなみにこの消失は遺伝子レベルでの消失みたいでアポトーシスを用いての発生後の消失ではないらしいですね。

なんにせよ、このトカゲ達は進化の過程で足を退化させました。

ですが手足を退化させただけで、完全に消失させてはいません。

蛇の身体には昔、トカゲ時代にあった足の名残が存在します。

それがこれです。

(引用:日立市かみね動物園 ヘビ年明ける)

かぎづめのようなモノが蛇の腹板にあるのが確認できると思います。これが蛇の足の名残です。

これはトカゲ時代の後脚の骨が退化したものだと考えられています。

こういった「退化して機能を失った器官」のことを痕跡器官と言います。

機能を失おうが何だろうが、形としてある以上はこれは足だと言わざるを得ません。

よって、私は蛇に足はついていると思っています笑

蛇足の話に戻りますが、蛇の足を描いた人は心象風景画家としては優秀な素質を持っていたかもしれませんね。

痕跡器官

私達生物はもともとは1つの生命体でした。

恐らくそれは原始的な生命体で、極めて還元的な高熱環境下で発生した細菌のようなものだと考えられています。

それがいつの間にか魚類やら何やらになって、紫外線が弱まってからは陸地に這い出し、両生類や爬虫類が生まれ

果てには哺乳類までに至っています。

ここから、生命の進化は連続的な時間の流れのうえに成り立っていることがわかります。

コマ切れのように突如として消えて、突如として現れをループしているわけではありません。

よって、生物には皆祖先がいます。

(祖先というと固く聞こえるかもしれませんが、もっと短いスパンでいえば両親や祖父や祖母のことです。この記事を読んでいる読者らにも両親がいると思います。チリやホコリから生まれた人間はいません。それが生命の連続性の証拠です)

その祖先が使っていた器官の中で完全な消失を免れ、機能を失った器官のことを痕跡器官と言い、痕跡器官を見ることで進化の手がかりを得ることが可能になっています。

今回紹介した蛇のカギヅメもそうですが、痕跡器官は意外と身近にあります。

私達ヒトにだってあります。

1番有名なのは盲腸でしょうか。

私達ヒトの祖先がサルだったというところは皆さんも知っていることだと思います。

ヒトの盲腸は草食性のサルのそれより非常に短なっており、いまではほとんど機能を果たしていません。

草食性のサルではこの盲腸に植物の細胞壁であるセルロースを分解する細菌を飼うことで、植物の吸収を効率的に行っていたものだと考えられています。

しかし、進化が進み雑食性に走っていった私達ヒトでは従来程に必要性のあるものではなくなったので、退化してしまいました。

ただ、完全に消失したわけではなく今の小さくまとまった形で盲腸が存在しているというワケです。

他にもモグラの目も痕跡器官として有名です。

モグラは外部の情報を視覚として受容することはできませんが、なぜか目があります。

これはモグラの祖先がトガリネズミという地上に生息していたネズミであることに端を発しています。

このトリガネズミは他の哺乳類との縄張り戦争に負けて地中に退避してきて、そこで適応を遂げました。

視覚をなくし嗅覚を鋭敏にし、穴を掘るために爪を研ぎ、前脚は大きく平べったくなっています。

しかし、ここまで進化したにも関わらずモグラはトリガネズミであった時に活躍した目を消失してはいません。

視覚なんてほとんど存在しないのに、です。

痕跡器官はこのように連続的な時間の上に成り立っている生物達の根源を推測することのできる材料の1つです。

進化は合理的に行われるものなので、不要な器官を現在の生物に問うより、過去の生物に問うた方が合理的なんですね。

ということで、今回はここで終わりにしたいと思います!

「使わないなら完全に消失させた方がいいんじゃないの…?」と思ってしまいますが、生存や種の保存に関わらない部分は進化が緩やかなんですね、きっと。

(進化論を専攻していたワケではないので、断言できません笑)

痕跡器官はまさに蛇足の器官だということで締めくくりたいと思います。

それではまた!

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