グラム染色法についてのアレコレ!院生の細菌学メモ書き

グラム染色法についてのアレコレ!院生の細菌学メモ書き

グラム染色法とは

デンマークの学者ハンス・グラムによって発明された細菌を染め分けることで細菌群を特定する方法のことです。

プロトコルに従えば基礎実習レベルの学生でさえも十二分に結果を出すことのできる容易さや簡易さに加えて、高価な試薬や機器を導入せずとも染色液と顕微鏡さえあれば大概の病棟/実験棟で行うことのできるローコストさで、感染症診療においては欠かせない微生物検査法として今のポジションを確立しています。

また、単純明快ながらも“色”で染め分けるという原理も実用性が高く、染められた色と形態的特長、患者の症状から大まかに細菌を同定することができます

これによって、適切な第一選択薬を迅速に検討することができるので、細菌分類学の基礎として重要な染色法であると同時に感染症診療の初期段階における臨床的意観点からみても意義深いものとなっています。

反面、その解釈には高い知識と技術が必要であり、染色結果を判断する目利きがないといけません。

私が院生の頃にやっていたTAアルバイトで学生さんからグラム染色法について聞かれたことを思い出したので、簡単にメモ書き程度に残しておきたいと思って記事にしました。

プロトコル

用意するもの

・カバーガラス

・スライドガラス

・白金耳

・メタノール

・ヨウ素-ヨウ化カリウム溶液

・エタノール

・クリスタルバイオレット

・サフラニン

手順

1.白金耳を熱滅菌する

Point

グラム染色に限った話ではないのですが、白金耳含めガスバーナーによる熱滅菌は内炎→外炎で行いましょう。内側の青炎より外側の赤炎の方が温度が高いためです!

2.白金耳によって細菌をスライドガラスに塗布する

Point

スライドガラスに塗布するさいには力まず、薄く伸ばすように塗り広げていきましょう!

染色状況

3.メタノールによって、化学固定を行う(バーナーによる火炎固定は殺菌も兼ねるので、ベター)

Point

火炎固定では極端に熱さない!

生細胞では細胞内部に外来の物質が入ってきたら積極的に排出しますので、化学固定を行う必要があります!

染色状況

4.1%クリスタルバイオレットによって染色(前染色)

Point

浸るくらいの量でちょうどいい!

染色時間はケースバイケース(本やサイトによってマチマチで短くて10秒、長くて5分程度のものも見たことがあります)

染色状況

5.水で洗浄

Point

洗浄と言っても指で擦るなど、本当に洗浄しないでください!前段階の試薬の洗い落としと溶液への順化の目的があります!

染色状況

6.ヨウ素-ヨウ化カリウム溶液で媒染

Point

とっても大事な手順です!

ヨウ素-ヨウ化カリウム溶液を加えることで前染色で入れた溶液との間で反応が起こり、巨大な複合体を形成します。この複合体は細胞壁の密度が粗いと外部に簡単に流出しますが、密度が細かいと外部に流出することができずに細菌内部に残留することになります

染色状況

7.水でwash

染色状況

8.95%エタノールで脱色

Point

手順5で媒染した細菌の脱色反応を行います!この脱色反応はグラム染色の中でも一番大事な過程です!

塗布部分が無色透明になるまでエタノールを加えて、揺すりながら脱色を行いましょう!2

※70%エタノールと95%エタノールとの間で長い間議論が交わされてきていましたが、私は95%エタノールで脱色反応を行いました

染色状況

9.水でwash

染色状況

10.サフラニンで染色(後染色)

Point

サフラニンの代わりにフクシン液を使うと検知しやすいです!

染色状況

11.水でwash後、乾燥

染色状況

12.顕微鏡観察

染色状況

結果解釈について

グラム染色法では色で染め分けると同時に菌の形態的特徴も判別することができますので、全部で4つのグループに区別することができます。

(引用:神奈川県衛生研究所 染色法)

グラム陽性青・球菌代表例:ブドウ球菌、レンサ球菌

グラム陽性青・桿菌代表例:乳酸菌

グラム陽性菌・球菌代表例:淋菌

グラム陽性菌・桿菌代表例:大腸菌

学生さんからの質問:なんで色が変わるんですか???

学生側にサクラが混じってるんじゃないかって思うくらいの良い質問です。

染色する細菌によって、なぜ色が2パターンに分けられるのか?これはグラム染色法の基本原理です。

キーワードは『細胞壁の厚さ』です

さて、上述の通りグラム染色法によって細菌はグラム陽性菌とグラム陰性菌に分けることができます。

臨床的な観点から見たとき、一般的にグラム陽性菌はグラム陰性菌より病原性が高いことが多いです。これはグラム陽性菌の外膜が莢膜や粘液層で保護され、宿主の免疫から逃れることに役立っているからです。対して、グラム陰性菌はヒトが持っていないペプチドグリカンを露出しているために攻撃を受けるために病原性を発揮する前に排除されることの方が多いです。

(余談ですが、私達の目が傷ついたときに出る涙にはリゾチウムと呼ばれるペプチドグリカンを破壊する酵素が含まれています)

では、グラム陽性菌とグラム陰性菌は何が違うのか?

それが細胞壁の厚さというわけです。まずはこれを見てください。

(引用:Wikipedia グラム染色)

見ればはっきりとわかるのですが

グラム陽性菌は細胞壁ペプチドグリカン層がめちゃくちゃ厚く、タイコ酸によって裏打ちされているので、強度がある

のに対して

グラム陰性菌では細胞壁ペプチドグリカン層がめちゃくちゃ薄くて、他の分子によって補強もされていません

前染色でクリスタルバイオレット処理を施したときにはどちらの細胞にも等しく溶液が侵入するのですが、その後のエタノール脱色では

グラム陰性菌は細胞壁が厚いので容易に脱色されない

のに対して

グラム陽性菌では細胞壁が薄いので、簡単に破壊され、クリスタルバイオレットが流出

してしまいます。ここにサフラニン溶液を加えるとグラム陰性菌はすでにクリスタルバイオレットで一杯なので入りませんが、グラム陽性菌では中が空なのでサフラニンで染まります。

これが「なんで色が変わるんですか???」の答えです。

学生さんが読んでくださって何かの足しになったり、これを機に新たに細菌学へ進みたいと思ってくれる人がいれば幸いです。

ではまた

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする