小さな身体に宿る圧倒的な耐久性!クマムシ=最強生物と言われる理由

小さな身体に宿る圧倒的な耐久性!クマムシについて

生物界世界最強ランキングの中で“守”の分野でトップに挙がる生物として、クマムシがよく話題に出てきます。

今回はそんなクマムシの秘密について書いていこうと思います。

クマムシとは

体長:50μ-1.7mm

寿命:活動期で35日

主食:動植物細胞の体液

生息域:世界中に分布。特に湿ったコケを好む。

一時期怪獣のような見た目から人気が出た

4対8脚のずんぐりとした脚でのっそのっそと歩くさまからクマムシという名前が付けられました。

生息域は世界中のあらゆる場所(陸上、水中、極地方に至るまで)で確認されており、身近な環境ではコケによく潜んでいます。興味がある方はコケをバラバラにして顕微鏡で観察してみてはいかがでしょうか。

乾眠状態へと移行し、“樽”のような形になることで物理的・化学的な変化に対して高い耐久性を示すことで有名です。乾眠状態では、代謝も一切合切がストップしていますが、再び水を加えることで例え120年飲まず食わずでも起き上がって行動するほどの耐久性を示します。

この乾眠状態はクリプトビオシスという名称で知られています。

では、その耐久について具体的に見ていきましょう。

温度

絶対零度から150℃の高温まで耐えます。

水分

体重の85%まである水分を0.005%まで減らし、極度の乾燥状態まで耐えます。

気圧

0気圧(真空)から75000気圧(地上の75000倍の圧力)まで耐えます。

放射線

57万レントゲンまで耐えます(ヒトの致死量は500レントゲン)。

弱点

指で押しつぶすなどの指向性のある圧力

乾眠状態に移る前の攻撃

なぜ高い耐久性を示すのか

なぜクマムシはここまで高い耐久性を示すのでしょうか。秘密はクマムシが乾眠状態へ移る際に合成するトレハロースと呼ばれる糖にあることが知られています。

では、そもそもなぜ高熱や冷温、乾燥状態になると生命は絶えてしまうのでしょうか?

それは、タンパク質の変性が起こるためです。

身体を構成するタンパク質はその機能を発揮するために、立体構造がとても重要だということが知られています。

しかし、この立体構造は高温環境下や乾燥環境下では崩れてしまい、その機能が損なわれてしまうのです。

身体を構成するタンパク質がその機能を発揮しないことは、すなわち生命活動の停止を意味します。

ゆえに、私たちヒトを含めた多くの動物たちはそういった環境の変化に弱いのです。

しかし、トレハロースを含んだタンパク質はちょっと事情が異なります。

トレハロースは乾燥状態では固体ですが、他の無機物のように結晶構造をとることはありません。むしろ、粘性を持った半固体として振る舞うことになります。

(ニコニコ大百科ではこの状態を「固い水飴」と表現しています)

このような特徴を持ったトレハロースを用いて形成されたタンパク質は高温や乾燥状態でタンパク質が変性しても、異常な形で変形することはありません。ミクロな流動性を持っているので、機能を発揮するための立体構造を維持したまま縮退するのです。

トレハロースは吸水性が高い物質ですので、乾眠状態へと移行したクマムシに水を与えるとトレハロースが水を吸い、タンパク質が機能を復帰することで代謝を再び行うようになるのです。

これがクマムシが高い耐久性を持つ秘密です。

この現象について、他のブログで面白い記事を見つけたので、ご紹介します。

その結果、トレハロースを蓄積できない個体では、乾燥するとほとんどの個体が死んでしまい、乾眠能力が著しく低下することが分かりました。乾燥した体の内部を観察したところ、トレハロースを蓄積できずに死んだ個体ではミトコンドリアの生体膜が壊れていたり、タンパク質の異常な凝集が観察されました。トレハロースを蓄積できない個体は、乾燥するとこのような生体構造の変化が起きたために死んでしまったと考えられます。一方、トレハロースを蓄積した乾眠個体では、このような異常は見られませんでした。

さらに、トレハロースが蓄積している場合では、乾眠個体中の脂質の構造が保たれていたのに対し、トレハロースを蓄積しなかった個体では、乾燥すると脂質の構造が崩れていました。脂質は、主に細胞膜などの生体膜を構成する要素です。つまり、トレハロースは乾燥したシーエレガンスの体内で脂質の構造を保護することで、生体膜を乾燥ダメージから守っているものと思われます。

(引用:生命活動のオンとオフ:やっぱり重要だったトレハロース)

耐久性の由来

では、なぜここまでの耐久性を獲得するに至ったのでしょうか?面白い論文を見たので、ご紹介します。

ということで、以降は クマムシに大量の外来DNA、驚異の耐久性の獲得一助に? を参考に書いていきます。

クマムシのゲノム解析の結果、全体の1/6近くに相当する17.5%が外来DNAに由来すものだろうということが示唆されました。

大半の動物に関しては、自身のゲノムが99%以上を占めており、外来DNA由来のゲノムの割合は1%に及ばないことからもクマムシゲノムに含まれる外来DNAの割合が非常に高いことが伺えるでしょう。

外来DNAの由来はほとんどが細菌からの遺伝子でした(16%)。これについて研究者たちは、クマムシは遺伝子の水平伝播によって外来遺伝子を獲得しているのであろうことも提唱しています。

(遺伝子の水平伝播:水平の名の通り、このDNA伝達は親からの継承ではなく、生物種間でのDNA交換を指す)

DNAは極度の乾燥状態などの極めて強いストレスにさらされると細かい断片となることが知られています。

細胞に水分を戻すと、DNAを格納している細胞核と細胞膜は一時的に物質を通しやすい状態になり、水分子以外の大型分子も容易に通過できるようになります。このときに、外来のDNAが取り込まれ、遺伝子の「パッチワーク」が形成される考えられています。

とのことです。

私見

まずはDNAのパッチワーク現象についてですが、真核生物の細胞ではDNAについて以下の仕組みが備わっています。

1.真核生物のDNAは通常は核によって保護されている

2.他由来のDNAが侵入してきた場合、即時分解される仕組みを持っている(厳密には少し異なりますが、大雑把に)

なので、本来はパッチワークが起こるはずはないのですが、クマムシはこの点ある程度寛容さを持っているのかなと推測したり…。

次は遺伝子の水平伝播と耐久性の獲得についてです。

遺伝子の水平伝播が知られるようになったのはここ最近で、私の記憶違いでなければ60年程前から確認され始めた現象です。

今では細菌の薬物抵抗性獲得の一因としても広く認知されてきていますが、動物と細菌間での遺伝子の水平伝播というのはそんなに聞いたことがありません。

また、例え遺伝子の水平伝播が起きたとしてもDNAに取り込まれ、発現するまでには多くの障害があります。原核生物と真核生物では修飾パターンも違えば、発現に関わるタンパク質も異なります。入ってきたものがそのまま発現されることはまずありえないでしょう。

ですが、クマムシゲノムがユニークなことと高い耐久性との間には関連性がありそうだというのは直感的に感じています。

また研究が進んできて、何かしらわかればさらに面白くなるかもしれませんね。

ではまた!

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