人はなぜ水中で生きていけないのか?【酸素の媒介として空気を選んだ理由】

人はなぜ水中で生きていけないのか?【酸素の媒介として空気を選んだ理由】

読者らの中で海中で生活できたらなと考えたことのある方はいないでしょうか?

私はあります。あの静寂の中で海面から射しこむ光をひっそりと浴びたいものです。

ですが、現実をみれば人が海中の中で活動できる時間はそう長くありません。

訓練を受けていない人であれば1分ちょっと保てば良い方であり、息を止めることに自信のある私ですら4分近く保てば僥倖でしょう。

しかし、魚は悠然と泳ぎまわっています。苦しくなる素振りすら見せません。なぜでしょうか。

今回、人はなぜ海中で生きていけないのか。ひいては、なぜ人は酸素の媒介として空気を選んだのかを書いていきます。

そもそもなぜ酸素がないと生きていけないのか

私たち人に限らず、生命体がその生命を維持するにはエネルギー(ATPといいます)が必要になってきます。

このATPを獲得するために酸素が必要なのです。

具体的に言うと、私たちが食べた食物からATPを取り出す際に酸素が使われます。

動物ではATP産生をミトコンドリアが担っています。

ミトコンドリアは外界から得た栄養(主に炭水化物である糖)と酸素とを結合させてATPを産生しています。私たち生物の身体を維持するエネルギーは酸化反応によって賄われているというワケですね。

よって、酸化反応に必要な酸素は生命を維持するのに必須なのです。

一部の細菌では酸素を必要としない環境でも繁殖できる種もいますが、それは嫌気呼吸と呼ばれる酸素に頼らないエネルギー産生方式を用いているからです。

ちなみに、酸素を必要とするエネルギー産生方式は好気呼吸と呼びます。

では、なぜ私たちは嫌気呼吸を行えないのでしょうか?それは効率に秘密があります。

好気呼吸では1回の反応で得られるATP単位は36

ですが

嫌気呼吸では1回の反応で得られるATP単位は2

です。その差は18倍であり、嫌気呼吸では動物のようなエネルギーをたくさん必要とする大きな体を維持するのに十分ではありません。

なので、人には酸素が必要なのです。

それでは、本題のなぜ海中で生きていけないのかを見ていきましょう。理由は2つです。

1.酸素含有量の差

中学理科でも習った覚えがあると思いますが、酸素はそもそも水に非常に溶けにくい物質です。

空気中に含まれる酸素量は約21%なのに対して、海中に含まれる酸素量は約0.004%程しかありません。

18%を下回っただけでも酸素欠乏症に陥るのに、0.004%しかなかったらもうどうしようもありません。

これだけの含有量では人が生きていくには不十分です。

どうしても海中で生きたいのであれば、肺を数百倍にまで膨らませてより多くの海水を取り込むか海水の酸素含有量を人工的に増やすしかありません。

2.粘度の差

他サイト様や某知恵袋でもこの手の回答は見られませんでしたが、粘度の問題もあります。

レントゲンなどでよく見る肺というのは実は大きな袋状の構造をしているわけではなく、肺胞という小さな袋が集まって出来ています。

この肺胞に張り巡らせた毛細血管からガス交換を行うのを呼吸と呼んでいます。

問題は、肺胞に至るまでに通る気管支が非常に細い管でできているいうことです。

皆さんイメージがつくと思いますが、細い管に水を入れると外圧にもよりますが、その管の途中で水は停止するということが想像できます。

これは水と管との間で発生する摩擦抵抗によるものです。この摩擦抵抗は管が細ければ細い程、そして流体の粘性が増せば増すほど、力を増すことが知られています。

同様に、気管支という細い管に海中は一定までしか入らずに肺胞まで辿りつけないでしょう。もしも、外圧を無理に加えようとすると気管支が圧に耐えられなくなり、破れてしまいます。

水の粘度:1.004×10-3Pa・S

空気の粘度:1.822×10-5Pa・S

水と空気の粘度は約100倍の差が存在しています。粘性が増すと摩擦抵抗が大きくなるので、粘性の点でも水より空気を酸素の媒介として選んだのは賢明な判断と言えるでしょう。

なぜ魚は陸上で生きれないのか

では、最後に魚が陸上で生活できない理由を考えていきましょう。

魚は酸素含有量が極僅かしかない海中でも効率的に酸素を取り込めるように鰓というものを進化させました。

魚を捌いたことのある人なら知っているのですが、鰓には縦横無尽の切り込みが入っており効率的な酸素の吸収のために表面積を増やしています。

また、流入と流出を一方通行にすることでも効率を上げています。

これほどまでに酸素の取り込みに特化した器官であれば地上の酸素も取り込めるような気がしないでもないです。

ですが、現実として魚は陸上では生きていけません。この理由は2つあります。

1.鰓という器官が地上に適応していないため

鰓は水中でこそフワッと広がっており、表面積を増やしていますが、陸地にあげると潰れてしまい、表面積が著しく下がります。

これでは酸素が十二分に吸収できないでしょう。

2.二酸化炭素の排出が不可能

いままで述べてはきませんでしたが、呼吸には二酸化炭素の排出も大事です。

酸素が貯まる一方で二酸化炭素も排出しなければ均衡は取れませんよね。

二酸化炭素は比較的水に溶けやすい物質ですので、水中で暮らす魚にとっては酸素を取り込んだ際に勝手に排出されるので、気に止める必要がありません。

つまり、血中の二酸化炭素を積極的に排除しようとする仕組みが進化上備わらなかったのです。

よって、陸上にあがった魚は二酸化炭素を排出することができずにアンモニア中毒に陥ります。

いかがでしたでしょうか?現在では酸素を多量に含んだ水で水中でも生きていけるかを実験しているともお話しをお聞きしましたが、実現すれば夢のような話ですね。

ではまた!

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